増税と偽憲法改正で日本は滅んでいく――自公政権圧勝を見て

安倍暗殺事件は世界的な事件

 7月8日、安倍元首相が暗殺された。表向き犯人の個人的な動機しか出てきていないが、一部でケネディ暗殺事件と比肩されているように、今回の暗殺事件は世界的な事件であり、世界的な政治勢力の暗闘の中で生じた事件であるとみるのが正しいであろう。

 安倍氏については、感情的な左翼系の批判は別として、恐らく日本のなかで一番論理的で詳細で厳しい批判をしてきたのは私である。だが、だからこそからかもしれないが、私にとっても安倍氏の死はショックであった。ぽっかり穴が開いたような感覚があった。
 
 8日の夜、次のようにツイッター上で発信した。

 安倍晋三氏逝去。積極財政への転換と皇統維持へのリーダーシップ、プーチンへの働きかけ等による平和実現への動きにひそかに期待していただけに残念です。中川昭一氏の死に続く安倍氏の暗殺は日本への脅しである。独立を目指す日本人は屈してはならない。安倍氏のご冥福を心からお祈り申し上げます。

世の中で起きた事件に対して直接私がツイッター上で反応したのは初めてのことであった。

 7月9日、半年ぶりに会議のために上京した。7月10日、参議院選挙があり、与党が圧勝し、維新の会が議席を増やした。予想通りとはいえ、この結果にぞーっとする感覚を再び覚えた。少しの救いは、山田宏議員が再選されたこと、参政党が一議席を得たことぐらいであった。他にも、維新の会の中の教科書改善運動に理解のある議員が当選したことは救いであった。

日本経済の更なる衰退

 しかし、トータルでは、今回の選挙はぞーっとする結果であった。日本は既にロックインされているが、更にロックインは強くなっていき、抜け出そうとしてもどうにもならず、解体の道、滅びの道を歩んでいくことになろう。

 まず、見やすいものとしては、緊縮財政路線が粛々と進むだろう。消費税が15%に引き上げられ、景気が悪くなり、外国企業による日本買いが更に加速する。日本経済全体が更に縮小し、日本の基礎体力はさらに弱体化していくだろう。当然、アメリカに対して約束した防衛費の増加もかなり抑えられよう。何しろ、緊縮財政路線から積極財政路線に転換し、GDP比2%の軍事費を主張していた安倍元首相が居なくなったからである。

全体主義化をもたらす緊急事態条項を認めてよいのか

 次に、中期的には、所謂憲法改正、実は、全く長所のない偽改憲が進むであろう。実際、岸田首相は改憲の発議を急ぐと言明した。だからと言って、改憲項目の内容のすり合わせが進むかはわからないが、これから3年間は自公政権のやり放題の時間となるから所謂改憲が成立するかもしれない。

 さて、自民党改憲4項目のうち一番の目玉は、実は9条問題ではなく、緊急事態条項である。政権が一番やりたいのもこの条項である。一般論としては、緊急事態条項は憲法には必要なものだが、今日という状況の中では、弊害しか生まないであろう。もしも、この条項が通れば、例えば、コロナ第7波・第8波、あるいは新しいパンデミックを口実に、議会を有名無実化して内閣独裁体制を構築し、国民生活ががんじがらめに統制されることになろう。必要もないワクチンがどんどん打たれ続けることになろう。昨年、今年と増え続ける超過死亡数がさらに増加し、人口減少が更に進むことになろう。

軍事大国の永久属国化を目指す9条➂項加憲論を認めていいのか

 また、何度も言ってきたように、9条②項を残して➂項に自衛隊を明記する案(正確には9条➀②項を残し9条の2を新設する案)は、自主防衛体制を築かないという宣言となり、日本を軍事大国(可能性としては米中露いずれでもよい)の永久属国とする案である。アメリカが極東から引いていけば、中国、場合によってはロシアの属国としていく案である。前の記事で紹介した北野幸伯氏が述べているように、日本政権は、9条のせいで「依存心の塊」となっているし、アメリカに依存できないと判断すれば、次の依存先となるであろう中国の属国に積極的になっていく心性を身に付けている。この心性を取っ払うには自衛戦力と交戦権を肯定することであることは言うまでもない(このやり方には、9条解釈の転換により両者を肯定する手もある)。ところが、②項護持・➂項加憲論では、自主防衛体制は築けず、軍事大国の保護国になるしかなくなるのである。

 そして、仮に米国が極東から引いていき依存先が中国に代われば、現在の日本の重要事項を決めている日米合同委員会(ここに日本の政治家は入っていないという)に代わって日中合同委員会が作られ、この委員会が日本統治を進めていくことになろう。これは、恐ろしい事態である。中国は第二の経済大国とはいっても、日本よりかなり貧しい国である。貧しい国が豊かな国を支配すれば、当然に搾取が過酷となる。日本は、アメリカが経済力を衰退させていく過程で随分搾取されたが、それをはるかに超える搾取が行われることになろう。

 ここまでは一定の実感をもって言うことができる。しかし、実感はないとしても、論理的にはもっと恐ろしい事態もあり得よう。日本が三分割され、北海道がロシア、東北・関東・中部がアメリカ、近畿以西が中国に支配され、それぞれ日ロ合同委委員会、日米合同委員会、日中合同委員会が統治するという事態も訪れるかもしれない。

 こういう悪夢が想像されるのも、政治家が「依存心の塊」になっているからであり、自衛戦力と交戦権の否定により、必然的にこういう政治家が生れざるを得ない構造になっているからである。

第一条を肯定してよいのか

 しかし、一番の問題は、4つの改憲項目の内容にあるのではない。改憲されない部分が肯定されてしまうことにある。「日本国憲法」無効論または無効論的な感情が根強く存在する現状では、実際上、「日本国憲法」は憲法としての権威を確立していない。もちろん、帝国憲法にも国際法にも違反して不法にアメリカに押し付けられたからだ。いや、所謂護憲派だって、「日本国憲法」を本当の憲法とは思っていないようだ。

 しかし、もしも、憲法改正が発議され投票が行われれば、少なくとも政治的には、「日本国憲法」は憲法としての権威を得ることになる。そして、改憲項目以外の部分は肯定されたという理屈が成立することになる。であれば、その中には、第一条も前文も入る。第一条が日本人によって肯定されたとなれば、一気に君主制の危機が訪れる。なぜならば、第一条は「天皇は、……この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」と規定しているからだ。傍線を引いた「主権の存する日本国民の総意」という言い方が特に問題である。「主権」を権力と解し、「国民」を天皇以外の現在生きている国民と解すれば、天皇という地位を法律または国民投票で廃止することも可能となるからだ。

 今も、こういう考え方はないとは言えないが、少なくとも憲法学説ではほとんど存在しないと思われる。だが、日本人が「日本国憲法」第一条を認めたとなれば、一挙に、こういう説が多数派になりかねないことを恐れる。一応、条文上理屈が通っているからだ。だからこそ、私は、第一条の「主権」とは権威のことであり、「国民」とは歴代の天皇と国民を含む全国民であるという説を維持しているし、その態度で教科書検定に臨んでいるのだ。実は、「日本国憲法」を議論した議会では、国民とは天皇と国民を含むという説が公権解釈として出されている。
 
前文の日本人差別思想を認めてよいのか

 次に前文であるが、前文では、諸外国を「平和を愛する諸国民」とし、日本を「戦争の惨禍」をひき起こした侵略国として描いている。明確に、日本及び日本人を世界の中で下層国として描いているのである。この日本人差別思想が一番現れているのが、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」の部分である。諸外国に生存まで預けてしまうと言っているのである。極端に言えば、もしも諸外国が死ねよと日本に対して言ったら死んでいかなければならないことになる。こういう恐ろしいまでの日本人差別思想が前文で語られていることに注意すべきである。

 前文で語られた日本人差別思想こそが、自衛戦力と交戦権の否定につながり、ヘイト法の根拠となり、全く謝る必要のない「従軍慰安婦」問題で日本が謝罪させられたことにつながっているのである。

前文に関する議論を

 だから、改憲は「日本国憲法」改正という形でやってはいけないことだが、このやり方を仮に認めるとしても、真っ先にやらなければならい事は、前文と第9条②項の全面削除である。そして、最低限、第一条の「この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」の部分を改めることである。例えば「この地位は、日本の歴史を通じて定まったものである」と修正すべきである。「主権」という言葉は、学説上出てくる言葉ではあっても、他国の憲法にはほとんど出てこない言葉であるから、無くしてしまった方が良い。何よりも、主権という思想は、君主独裁を生み出し、次いでロベスピエールやヒトラーやスターリンの個人独裁、専制政治を生み出してきた危険な思想であるからである。

 ともかく、特に前文についても議論すべきであろう。

 このように書いてきて、改めて「日本国憲法」無効論の必要性を思った。また、自衛戦力と交戦権を肯定する必要性、その仕方に関する議論が必要であると思った。興味のある方は、拙著『「日本国憲法」・「新皇室典範」無効論』(自由社)または『自衛戦力と交戦権を肯定せよ』(同)を読まれたい。

ロシアとの関係改善を図れる政治家が居なくなったダメージ

 消費増税とともに、所謂改憲、実は偽改憲で、日本は更に衰退していく。その自律性、独立性をさらに無くしていく。アメリカにとっても、中国にとっても都合の良い国に更になっていく。

 もう一つ、自民党圧勝、というよりも安倍氏が居なくなったことからくるものであるが、参院選後には対ロシア関係の改善ができにくくなったという問題がある。ここでは、戦争における正義の問題は措いておくが、ウクライナ戦争はロシアに有利に展開していく公算が高い。また、そもそも日本にとって、中国とロシアがくっついている現状は好ましいものではない。中露を分断することこそが日本の国益であり、それは、実は本来のアメリカの国益でもあるはずである。それゆえ、ロシアとの関係改善を図るべき時期が必ずくると思われるが、その時に動ける政治家が居なくなってしまった。安倍氏が生きていれば、最適任であったろう。いや、安倍氏は、世界的にウクライナ戦争を収めなければならなくなったときに活躍できる一候補ともなり得たように思われる。

 こういう、少なくとも日本の危機を救い得る可能性を持った政治家を失ったダメージは随分大きいように思われる。安倍氏亡き後の自民党は、むしろまともな人ほど対露強硬論を唱えるような状況に更になっていくように思われる。岸田政権は、GDP2%の軍事費増にさえも渋っておきながら、ロシアに向けて突進している。いやさせられている。愚の骨頂である。防弾チョッキを送ったり、ロシア外交官8人を追放したりするなど、自分の実力も弁えず、突進している。やりすぎである。戦時国際法も御存知なく政治を行っているからである。

 ともかく、これから、中国からの脅威に加えて、ロシアからの脅威も、このままでは強まっていくだろう。今回の暗殺の背景がいずれにあろうと、安倍氏の死は、世界情勢における日本の危機を更に強めてしまう結果をもたらすであろう。

  転載自由



 





 



 

この記事へのコメント