自衛戦力と交戦権の否定がもたらすもの――鈴木宣弘氏動画を見て

昨日から鈴木宣弘氏の動画を多数見た。以下に、一部を掲げておく。

「食の安全保障」を確立しなければ危ない食品が日本に集まる。鈴木宣弘・東大大学院教授に聞く
https://www.youtube.com/watch?v=x0YQr6zqggY

第7回「国民の食と農やくらし、いのちを考えるセミナー」
https://www.youtube.com/watch?v=fGuwICnCpns&t=2359s

農業消滅!? アメリカの国家戦略に食い荒らされる「日本の食」 [三橋TV第470回]鈴木宣弘・三橋貴明・高家望愛
https://www.youtube.com/watch?v=vFf1sdl4F7w

株式会社アメリカの食糧戦略…第二の占領政策の実態と売国奴たちの正体(鈴木宣弘X三橋貴明)
https://www.youtube.com/watch?v=k29dQD73OJQ


自衛戦力と交戦権の否定が、官僚や政治家のアメリカへの屈服を生む

 鈴木氏の動画をみていくと、前の前の記事である〈ウクライナ戦争雑感(2)――自衛戦力と交戦権を肯定せよ〉で展開したように、自衛戦力と交戦権の肯定の必要性に対する認識を新たにした。9条第1項は自衛戦力と交戦権を否定したものと捉えられてきたが、両者を肯定しなければ、日本は外国からの直接間接の侵略を受け滅亡するのは必定である。実際、両者を肯定する憲法解釈は、例えば長尾一紘氏が唱えているし、「憲法」を押し付けたケーデイスも認めていたものである。ウクライナ戦争という危機に際して、両者を肯定する長尾氏の解釈に転換する必要がある。

鈴木氏は、前記事で紹介した、グローバリストの価値観を表す「今だけ、カネだけ、自分だけ」という言葉を言い出した人のようだ。鈴木氏は動画の中で、日本の農業が消滅する危機を迎えていること、輸入食品に関する農薬規制などがどんどん緩くなり、日本の食が危険なものになっていっていること、そういう農業政策はアメリカからの脅しに屈して日本の経産官僚と政治家自身が着々と進めてきたものだということを訴えている。

官僚たちや政治家は、平成に入って以降、次から次へとアメリカへ日本の国益を売り渡してきたが、その根本原因が改めてよくわかった。自衛戦力と交戦権を否定した結果、自主防衛力を持てなくなった日本国家は、守ってやるという米国の命令通り動いてきたということがよくわかった。〈言うことを聴かなければ守ってやらんぞ〉という暗黙または明示の圧力によって、日本の政治家も官僚もアメリカの命令を守ってきたということを改めて知った。改めて自主防衛力の整備をしない限り、アメリカに骨の髄までしゃぶり尽くされるだろうと感じた。

 日本をめぐる基本政策は、日米合同委員会を通じておおよそ決まってしまうということを改めて知った。日米合同委員会は、日米地位協定と関連して作られた機関だが、月2回、日本側の官僚とアメリカ軍人が集まって開かれる会議である。日本の政治家が除かれているということが特徴的だが、アメリカ側は日本の政治家を無視して直接に官僚を掌握しているともいえるわけである。しかも、軍事関係の機関であり、アメリカが日本を守ってやるという思想のもとに作られている機関だから、ここでは、日本の官僚は、アメリカの言うことをそのまま受け入れるしかなくなるわけである。そして、農業を破壊する売国奴になっていくしかなくなるわけである。

 時にアメリカに抵抗する官僚も出てくるが、そういう官僚は、ほとんどすべてが追放されていった。一番端的な例が、政治家の例だが、一時農水大臣を務めてアメリカに抵抗した故・中川昭一氏だという。日米合同委員会の存在を考えれば、官僚たちが、大臣よりも米国の意図に忠実に動いてしまうことは十分考えられる。そういう環境が、財務大臣時代の中川氏失脚の決め手となった酩酊事件を生んだのだと推測できる。

自衛戦力と交戦権の否定は、自分の頭で考えられない学者を生み出す

 しかし、官僚や政治家がアメリカの言うことを聞かざるを得なくなるのはまだわからないでもない。特に官僚はそうである。しかし、鈴木氏は、学者までもが自分の頭で考えようとせず、アメリカの利益になるように、アメリカが言うことと同じことを言う傾向があると述べている。その一番の例が、昭和33年に『頭脳』という本を著した慶応大学教授の林髞(たかし)氏であろう。氏は、米食は日本人を馬鹿にするからパン食に転換すべきだと奨める荒唐無稽の説を唱えた人である。この説が日本の農業破壊の強力な思想的出発点となったことは事実である。どの分野でも、自分の頭で考えようとせず、アメリカの言うとおりに物事を考える学者が多すぎるのだと改めて思った。ウクライナ戦争をめぐるマスコミ及び識者の言論を見ていても、同じことを思う。

 翻って言えば、国際法学の立場から言えば当然に無効と位置付けられるべき「日本国憲法」を有効とするほとんど全ての憲法学者なるものも、自分の頭で考える勇気がないからこそ生まれる人たちである。そして彼らは、所謂護憲派であれ改憲派であれ、日本の憲法学をがたがたに破壊した(占領管理基本法学化)人たちである。そのことを改めて思った。

 自分の頭で考えられないのは、結局は勇気の欠如、あるいは卑屈な精神からくる。9条②項が卑屈な精神を日本人にもたらすだろうことは、佐々木惣一が「日本国憲法」審議が行われた帝国議会で、「日本国憲法」への反対討論の中で述べていたことである(拙著『自衛戦力と交戦権を肯定せよ』55~56頁)。そのことを改めて思い出した次第である。

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追記〈安倍改憲構想の出所について〉6月5日記 ……本記事を書いた後、ふと思った。9条②項を護持する安倍改憲構想がどこから出たものなのかということだ。安倍改憲構想は、日本政策研究センター機関誌の『明日への選択』に掲載された伊藤哲夫氏の論考が出所だと言われてきた。そのことを聞いたとき、私は、育鵬社系知識人は、また、このようにバカなことを行ったのかと思った。また、公明党に配慮したものだとも言われてきた。だが、これら二つのこと自身は嘘ではないだろうが、鈴木氏の動画をみて日米合同委員会の話を思い起こしてみて、実は、アメリカの意思、少なくとも民主党及びデイープステートの意思なのではないかと思った。

 ずっと不思議だったのは、あれほど9条②項の廃止を主張してきた保守派の論客たちが、2017年5月に安倍改憲構想が発表されたとき、ほとんど批判せず、その立場に付き従ったことだった。大物言論人の中では西尾幹二氏ぐらいしか反対しなかったことが私には不思議であった。信じられない思いをした。自分の頭で考えることをしない人たちだとも思ったが、このような変節は伊藤氏や公明党の影響力だけでは到底説明がつかないなと思ってきた。だが、日米合同委員会などを通じて伝えられるアメリカの意思が、日本の自主武装体制を絶対に許さないものだと考えるならば、彼らの変節は了解可能となる。だからと言って、彼らの変節は許されるものではないが、ほとんどの保守派が安倍改憲構想から逸脱しないのは、この改憲構想の背後にアメリカの意思を読み取っていたからなのであろう。というようなことを考えた次第である。

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