医療過誤隠蔽のため病院が虚偽の「虐待通告」をしたケース――『児相利権』第5章3節より

 最初に紹介したオランダ亡命事件の事例はコンビニで通報された。近隣による通報のケースといえる。これに対して、2回目3回目に紹介した事例は、ともに学校に通報されたケースである。今回は、病院が医療過誤隠蔽のために子供が親に虐待されたという虚偽通告したケースである。珍しく、人身保護請求手続きで、親が子供を取り戻したケースである。

 この事例は、『児相利権』第5章3節に記されているが、当事者自身ではなく、本書の著者が、《東京高等裁判所 平成26年(人ナ)第4号 人身保護請求事件》に基づき、まとめなおしたものである。
 以下、経緯を紹介していこう。

病院から児相へ

 児相により拘束された当時5歳の女児玲菜ちゃんは、先天性の腎疾患のため、入退院を繰り返していた。平成20(2008)年6月、県内の大学医学部附属病院で、「中心静脈カテーテルを鎖骨下に挿入し、同年8月に、同大病院によってパーター症候群と診断されました」(296頁)。

 翌21年2月、玲菜ちゃんは腹痛・発熱を訴え、近くの市立病院に入院した。敗血症の疑いから、3月に同大病院に転院した。ところが玲菜ちゃんは、発熱がおさまらないだけでなく、「血液の細菌培養検査において、多数の常在菌が検出された」(296頁)のである。

 すると、4月2日、同大病院は、付き添いをしていた母親の「虐待通告」を、県中央児相に対して行った。理由は「母親がわざと細菌を混入させた」とするものだった。

 通告を受けた児相所長は、玲菜ちゃんと両親の面会を禁止した。そして、4月20日、「玲菜ちゃんを退院させて児相収容所に移した」(同)。

両親を「代理ミュンヒハウゼン症候群」とする鑑定意見

 両親は、検出された細菌は同大病院の衛生管理の不備が原因だと考えたが、児相が依頼した医師による鑑定では、「本児はPCF(病気を偽装された小児被害児)である」(同)ということだった。そして、玲菜ちゃんの両親は「代理ミュンヒハウゼン症候群」であり、子供の病気を偽装したのだとする鑑定意見も付けたのである。ちなみに、鑑定意見を書いた医師は、「日本子ども虐待医学研究会評議員」などの経歴をもつ。

 「ミュンヒハウゼン症候群」とは、「ほら吹き男爵と呼ばれるミュンヒハウゼン男爵にちなんで名づけられた症候群」である。つまり、本当は病気でないのに病気だとつ偽って治療を受ける行動が「ミュンヒハウゼン症候群」である。「代理」という言葉が付加されているのは、親が自身ではなく、子供の病気を偽装するという意味からである。

「28条申立」により児童養護施設収容

 上記鑑定に基づき、県中央児相は県の家裁に「28条申立」を行った。家裁は申し立てを認容して、玲菜ちゃんを児童養護施設に入所させた。それから2年後、児童福祉法第28条第2項の定めに従い、県中央児相は施設入所措置の更新を家裁に申し立てたが、再度、両親は争った。だが、両親側に「虐待」の事実がなかったことを証明できないばかりに、結局、家裁は入所措置の更新を認容した。
 
人身保護請求手続きで玲菜ちゃんを取り戻す

 ところが、さらに2年間経過したとき、児相側は期間更新の申し立てをしなかった。家裁の承認がない状態で、玲菜ちゃんを拘束する状態が継続することになった。この状態は、児童福祉法第28条第2項に違反し、「日本国憲法」第18条に違反する状態である。
 *「日本国憲法」第18条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

そこで、両親の代理人弁護士らは、人身保護請求を行うことにした。児童養護施設の入所措置が、人身保護法第2条違反であるからだ。人身保護法第1条と第2条は次のように規定している。

第1条 この法律は、基本的人権を保障する日本国憲法の精神に従い、国民をして、現に、不当に奪われている人身の自由を、司法裁判により、迅速、且つ、容易に回復せしめることを目的とする。
第2条 法律上正当な手続によらないで、身体の自由を拘束されている者は、この法律の定めるところにより、その救済を請求することができる。
② 何人も被拘束者のために、前項の請求をすることができる。


 まさしく、玲菜ちゃんは、第2条第1項の「法律上正当な手続によらないで、身体の自由を拘束されている者」に該当すると言えよう。

平成26年12月16日、東京高裁は、請求を認める判決を下した。珍しく、親側が勝訴したのである。

児童虐待防止法の親性悪説こそが問題

ここまで第5章に挙げられている3つの事例を見てきたが、いずれも、虚偽の「虐待通告」から始まっている。しかし、なにゆえに、虚偽通告を行うのであろうか。今回紹介したケースでは、医療過誤という病院のミスを隠蔽し責任を親に擦り付けるために、「虐待通告義務」という制度が利用されたとみることができよう。

責任の擦り付けという特徴は、晃華学園事件でもみられた。だが、学校の場合には、自分たちの教育方針に従わない親の子供を学校から追放するために(児相に遺棄するために)こそ、虚偽通告を行っているようだ。つまり、本来は親の代理として国家側・学校側が有する教育権が、親が自然的に有する教育権を押さえつけ支配しようとする衝動から、理屈が通らなくても、虚偽通告が行われているとみられる。

親の親権・教育権を押さえつけるときの格好の口実が、「子供の虐待防止」ということになる。児相側・学校側にとって都合の良いことに、児童虐待防止法第2条は、「児童虐待」を保護者が行うものに限定している。学校や児相の収容所及び養護施設での虐待は除かれている。親だけをとりたてて悪い存在として決めてかかっている傾向があるのだ。親性悪説に立っているといえよう。児童虐待防止法の考え方に従い、マスコミも世間も親性悪説に立って物事を捉える。家裁も同じだ。それゆえ、学校や病院の虚偽通告を簡単に信ずることになるし、児相の一方的な主張だけに耳を傾け、親の言うことの方が正しいのではないかと思っても、児相側を勝たせることになるのであろう。それゆえ、親性悪説こそが虚偽通告を生み出す本質的な原因だといえるのではないか。

ともかく、こういう親性悪説の延長上に、親の体罰禁止・懲戒権廃止政策が出てきたのであろう。

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