ウクライナ戦争雑感――ロシア勝利の場合を考えておくべきこと

 ここまで10回以上にわたってウクライナ戦争について考えてきた。そのなかで、果たして、マスコミの言うように、ロシア軍の作戦はうまくいっていないとか、金融的・経済的に追い詰められていく、とかいう話は本当だろうかと思うようになった。軍事作戦が思ったようにいかなかったのは本当だろうが、トータルではロシアの狙い通りに事は進んでいるようにも見えるからだ。

国際政治的には日本は少数派

 国際政治の面からみると、単純に国連決議における票の出方を見ても、アメリカに付き従う国家はむしろ少数派であることが分かる。むしろ反米というよりも、非米諸国が一番の多数派であることが分かる。3回国連決議が行われたが、次のような変遷を経てきている。

3月2日のロシア非難決議……賛成141、反対5、棄権35、無投票12で可決
  反対はロシア、ベラルーシ、シリア、北朝鮮、エリトリア
3月24日の「ウクライナへの人道支援決議」……賛成140、反対5、棄権38、無投票10で可決
  反対はロシア、ベラルーシ、シリア、北朝鮮、エリトリア

4月7日、ロシアを国連人権理事会から除名する決議
……賛成93、反対24、棄権58、無投票18で、3分の2以上の賛成を得たということで可決。
棄権から反対に変化は、中国やベトナムなど18か国
賛成から棄権に変化は、ブラジルやメキシコ、UAE=アラブ首長国連邦など39か国
インドは今回も棄権


 反ロシアの立場を表明する国が、50か国近く減少したことが注目される。賛成は所謂西側諸国だけとなった。賛成しなかった国は、反米とまでは言えないが、おおよそ非米諸国と位置づけられる。この中には、新興大国である中国、インド、ブラジルなどが含まれる。国の数の上でも、領土の上でも、人口の上でも、非米諸国の方が多数派であることに注目すべきである。日本は、国際社会の動向にしたがったつもりで反ロシアの立場をとっているが、国際政治の動向が変わり始めたことに注目しなければならない。

 特に、アセアン諸国の動向をみると、ベトナムとラオスが反対し、タイなど6か国が棄権し、賛成したのはフィリピンとミャンマーだけであった。

経済制裁が長引けばドルの金融覇権が終わる可能性

 次に、金融経済の点をみるならば、西側による経済制裁はあまり効いていないようにも見える。そのことは、アメリカのマスコミも認めだしているようだ。

 逆に経済制裁した側が、特に西欧諸国が痛手を受けているような感じがある。電気代、ガソリン代などが大幅に値上げされたため、生活そのものが苦しくなっている。世界的にも物価高に悩まされているし、一部の諸国では政府に対する抗議行動が行われている。

 また、ロシア国民の生活も苦しくはなっているようだが、石油・天然ガス価格の上昇などでロシアは大儲けしたとも言われる。

 何よりも、増田俊男氏や大井幸子氏などがいうように、SWIFT(国際銀行間通信協会)からのロシアの排除が逆にドル覇権の終焉をもたらすことになるかもしれない点が重要だ。アメリカがイラク戦争を仕掛けた狙いはイラクの石油を支配することであったが、本当の目的は、石油決済をドルで行い続けることでドルの金融覇権をユーロから守ることであったと言われる。

しかし、ロシアをSWIFTから排除したことによって、石油・天然ガスの決済がドルからルーブルなど別の通貨によって行われるようになっていっている。この変化が進めば、ドル覇権は終焉していく可能性が高くなるように思われる。なによりも、中国、インド、ブラジルなどの人口の多い、これから市場規模を拡大すると見られる国が、ロシアが主導する金融世界の主要メンバーになっていく公算が高いからだ。

 さらに言えば、「ブチャ虐殺」の捏造などが、ヨーロッパではばれつつある。そういう情報がテレビでも出てきているという。国際世論面ではロシアが巻き返しつつあることに注意しなければならない。

 国際政治面や国際世論面、金融経済面では、ロシアは不利だと思われたが、意外に善戦しているどころか、特に金融経済面ではロシア側に有利な方向に動いているようだ。だが、圧倒的に有利と見られた軍事面では、意外にもロシアは苦戦しているし、ウクライナの強気な発言が目立っているし、ロシアに不利な情報が飛び交っている。とはいえ、基本的に作戦目標を達しつつある。ウクライナの生物兵器研究所や核兵器研究の実態を調べ終わったようでもあり、何よりもロシア系ウクライナ人の多い東部と南部を抑えている。この実態を根拠に停戦協定、さらには米露条約なりを締結していけば、ロシアの実質的な勝利という事態になっていきそうでもある。

露西亜勝利の可能性も考えておくべきこと

今後のことは分からないが、もちろん、ロシアの敗北と衰退の可能性も考えられるだろうが、ロシアが戦争目的を達成して、西側先進国が没落していく可能性も相当に高いから、このことも考慮しておかなければならないだろう。ともかく、日本は対ロシアで前に出ていくべきではない。あまり真面目に、純情可憐に、対ロシア制裁などに注力してはいけない。何しろ、独仏などはウクライナに武器援助するとともに、ロシアにも武器輸出を増やしているという。

日本が国際政治の面で力を入れるべきは、中国とロシアの分断、ロシアを西側に引き付ける政策に、欧米諸国、特にアメリカが転換するようにもっていくことである。バイデンの中国とロシアをくっつけてしまう政策は明らかな間違いだからである。

 更に一番重要なことは、対中国防衛、対ロシア防衛のため、9条解釈の転換等できるところから手を付けていくことである。

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