不寛容なリベラリズムとしてのラムザイヤー論文撤回運動――「学問の自由」の圧殺

ラムザイヤー論文撤回運動をめぐって

10日ほど前、ヨラム・ハゾニー『ナショナリズムの美徳』に関して二つのブログ記事を認めた。この記事と関連して思い出したことがある。アメリカで行われているラムザイヤー論文撤回運動のことである。

この運動は、英語論文の世界で慰安婦性奴隷説や強制連行説を唯一否定したラムザイヤー氏の論文の「撤回」を求める署名運動である。ラムザイヤー氏の論文を批判するならば、批判論文をどんどん書けばいいものを、多数の署名を集めて数の力で、雰囲気的にラムザイヤー氏を追いつめてラムザイヤー論文を葬ろうという運動である。学問の自由を圧殺する運動であり、中国型とは異なるアメリカ型全体主義を推進しようとするバイデン政権の方向とも一致した運動である。

この運動に対する打ち返しとして、本年3月24日参院文教委員会で、有村治子議員が、この撤回運動をどう思うか、萩生田文科大臣に見解を問いただした。萩生田大臣は、直接にではないが、一般論として論文撤回運動に対して否定的な見解を示した。これについては、以下の動画を参照されたい。【有村治子】慰安婦問題、教科書記述、河野談話、ラムザイヤー論文を問う!-参議院文教科学委員会[R3/3/24]
  https://youtu.be/MdUAmdOclng

また4月24日、国際歴史論戦研究所主催で、4月24日に緊急シンポジウムがおこなわれた。このシンポジウムについては、本ブログ記事〈緊急シンポジウム「ラムザイヤー論文をめぐる国際歴史論争」の動画を見よう〉でも紹介した、以下の動画を見られたい。
  緊急シンポジウム「ラムザイヤー論文をめぐる国際歴史論争」
https://youtu.be/Sy6jVLu0xow

 そして6月3日、国際歴史論戦研究所は、日本学術会議に対して、〈「学問の自由」の侵害について日本学術会議の見解を問う公開質問状〉を送り、ラムザイヤー論文撤回運動に関して見解を問い、記者会見を行った。だが、これに対する回答は正式にはなかったので、7月9日、同研究所は〈新事実を踏まえ「学問の自由」の侵害について再度日本学術会議の見解を問う 公開質問状〉を送り、記者会見を行った。
昨日、国際歴史論戦研究所の二つの記者会見の動画を見た。それで、ハゾニー『ナショナリズムの美徳』の記述とラムザイヤー論文撤回運動が結び付いたわけである。二つの動画は以下のとおりである。見られたい。
6/3 日本学術会議への「学問の自由」に関する公開質問状送付 記者会見
https://youtu.be/b8GgctWN0Us

学術会議の回答に重大事実が!! ラムザイヤー論文の「撤回」署名運動「学問の自由」の侵害か?! 「公開質問状」(6月3日付)の「回答」は 新たに重大な事実 
https://www.youtube.com/watch?v=-TFLr2hl4JA

 
ラムザイヤー論文撤回運動とは中世カトリックの異端審問

2回前の記事〈ヨラム・ハゾニー『ナショナリズムの美徳』を読まれたい――グローバリズムよりナショナリズムの方が自由・権利・民主主義を保障する〉の中で、次のように記した。下線は、今回新たに付したものである。

帝国主義としてのリベラリズム、独善的なリベラル帝国主義      
         
 ともあれ、ナショナリズムは、第二次大戦後、リベラリズムとマルクス主義に攻撃され、衰退してきた。では、リベラリズムとは何か。このことに関しては第6章で展開されている。リベラル主義は、エジプトのファラオ、古代ローマ皇帝、近代初頭までのローマカトリック教会、マルクス主義者などと同じく、帝国主義の一つである。

aリベラル帝国主義に対する反対派が次々に倒されていくと、「独断的な帝国主義がリベラル陣営内の優勢的意見として残ることになった――それには、無謬性の教義や異端審問と禁書目録の嗜好などが含まれ、意図せずして、典型的な中世カトリック帝国の最悪の特徴を急激に帯びつつある」(65頁)。

b西洋では、「イスラムや同性愛、移民、その他多くのテーマについての教授陣の意見に対する公式及び非公式の検閲が、大学では一般的になっている」(65頁)。もちろん、これらのテーマに対する批判的な意見を明確にすれば、大学から追放されるのが日常になって久しいようだ。更に多くの公共の場が、大学と同じになってきている。「西洋の民主主義国家は、急速に一つの大きな大学キャンパスになりつつあるのだ」(66頁)。

では、なぜ、このように不寛容な社会がもたらされたのか。「ネイションの独立と自決という基本原則をもつ西洋のプロテスタント構造から離脱」(同)した結果である。ネイションの独立と自決という基本原則は、立憲主義的・宗教的立場の多様性を義務付けているから、全く異なる立場に対する寛容さをも要求していることに注目すべきである。


下線部aに注目されたい。英語の世界では、慰安婦性奴隷説や強制連行説を否定することは異端審問に引っかかることである。下線部bには「イスラムや同性愛、移民、その他多くのテーマ」に関する検閲が大学で一般的になっていると記されているが、「その他多くのテーマ」の中に慰安婦問題が入ってしまっているのだ。慰安婦問題では英語の世界で定説になっている性奴隷説や強制連行説を否定する説を唱えることは異端審問に引っかかることであり、そのような否定説に対しては、更にはそのような否定説を唱える人に対しては何をしてもよい、という感覚に研究者たちはなってしまっている。4月24日緊急シンポジウムで紹介されたラムザイヤー氏の証言によれば、特に若手研究者がそうなってしまっているという。そういう雰囲気の中で、ラムザイヤー氏に対する個人的脅迫さえも行われていると言う。

アメリカでは、とりわけバイデン政権になってますます、保守派の、そして日本やアメリカの歴史を擁護する言論は行えなくなっているのである。反日反米全体主義体制が成立しているからである。

 ともあれ、今回紹介した動画4点をご覧いただきたい。


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