『新しい歴史教科書』一発不合格の世界史的意義―――アメリカ大統領選挙観察を通じて分かったこと

 昨年10月以来、アメリカ大統領選挙を注視してきた。一体、バイデンが本当に政権を掌握しているかどうかは分からないが、一応、表向き、民主党政権が少しずつ始動しつつあるようでもある。しかし、アメリカの大手マスコミも「選挙は盗まれた」といった報道を行い始めたとも言われており、本当にバイデンと民主党が権力を握っているのか疑問の点もある。

 本当のところは良くわからないし、米国の現状をどのように理解するべきか分からないが、日本の教科書をめぐる現状が悪化した原因については、非常によくわかった気がしている。いいかえれば、『新しい歴史教科書』一発不合格の本当の理由が分かった気がしている。

 「侵略」が少数派となり、反日資料集学び舎が検定合格した2015年

 前にも述べたが、2015(平成27)年版の中学校歴史教科書8社を分析したとき、私は喜んだ。1990年代の教科書では「中国への侵略」というタイトルが躍っていたのが、2015(平成27)年版では「中国への侵略」という立場をとる教科書が完全に少数派になっていたからである。だが、この2015年版から、歴史教科書の思想は逆流し始める。その最たる表われが、学び舎の検定合格であった。『安倍談話と歴史・公民教科書』(2016年、自由社)でも記したように、学び舎は教科用図書検定基準の規定する多くの項目に違反しており、検定不合格にすべき代物であった。そもそも教科書とは言えない、反日資料集でしかない代物てあった。だが、何ゆえか、検定合格した。これは完全に違法検定であった。

 検定基準違反の学び舎が合格した理由とは

 この学び舎の合格は、育鵬社の躍進を支える結果となった。採択戦では、学び舎と自由社が、一度不合格となった欠陥教科書として、また左右の極端な教科書として予め外されて教育委員会における審議が行われる事態となった。その結果、育鵬社の歴史・公民教科書が保守系の強い自治体で採択されていった。この結果から推測されるように、学び舎検定合格は、左翼の支配する文科省と育鵬社教科書の採択を増やしたい安倍首相、両者の意向が一致した結果行われた違法検定であった。

 基本的には上記の背景から学び舎検定合格が強行されたものと私は考えていたが、同時に、アメリカからの圧力、反日的なオバマ政権による圧力によって、学び舎の検定合格と自由社の惨敗が仕組まれたとも考えていた。だが、もう一つすっきりしない感じがあったし、もう一つ実感がなかった。アメリカの事情についてはほとんど知らなかったからである。

なぜ学び舎が合格したのかという点については、結局、2015年、2016年段階の私にはすっきりわからなかった。ただし、次回の2020年採択戦、というよりもそれ以前に2019(平成31)年検定は、自由社にとってもっと厳しくなるという危機感はあった。歴史も公民も油断すれば落とされてしまうかもしれないと強く警戒していた。だからこそ、公民教科書作成については、9年間もブランクがあったにもかかわらず、極力修正を少なくしようと考え、本文については4分の1程度、全体的にも3分の1程度の改訂にとどめた。それでも、落としに来ているなと感じる事態となってしまったのは、本ブログで何度も報告した通りである。

 アメリカからの反日思想押し付けこそ本当の原因であった

 話を学び舎検定合格の理由に戻すと、アメリカ大統領選挙を見ていてはっきりと分かった。国内左翼の力だけでは、反日資料集でしかない学び舎の検定合格を導き出すには力不足である。学び舎を検定合格させ、自由社をいったん不合格にした一番の理由は、国内的要因ではなく、反日反米思想に染まったアメリカからの反日思想の押し付けであった。そう考えると、2015年からの逆流、そして2020年の自由社歴史教科書一発不合格の理由も理解できるものになった。

1776年VS1619年

 昨年の秋に読んだ『西洋の自死』では、欧州の指導者たちが2010年前後に自死の道を選択したと記されている。その時は、アメリカは自死を選択した仲間にはまだ入っていないと考えていた。だが、アメリカ大統領選挙をめぐる対立とは、特に私の関心から言えば、本質的には、アメリカ第一主義・愛国主義のトランプ派と反米主義のバイデン派の対立であった。

 昨年11月、トランプ大統領は、「1776委員会」というものを設立する大統領令に署名したという。この委員会は、名称から明確にわかるように、1776年の独立宣言と米国独立革命をアメリカ建国の出発点とみなす立場からつくられるものである。アメリカの教育現場で蔓延する反米教育をストップさせる役割を期待された組織である。

 しかし、バイデン大統領は、就任するや否や、この「1776委員会」を即座に廃止した。この背景には、ニューヨークタイムズが2019年に始めた「1619プロジェクト」の思想がある。1619年とは、アメリカに初めて黒人奴隷が連れてこられた年である。「1619プロジェクト」とは、この1619年をアメリカ建国の年とする考えからなされるものである。その基本的な主張は、アメリカとは、黒人奴隷を犠牲にして建国された忌まわしい人種差別国家であり、黒人たちに対して賠償しなければならないというものである。既に、民主党は賠償法案を何度か提出したことがあるという。

 この極端な自虐史観・反米思想は、少なくとも指導層・知識層の中の多数派になっているようだ。この「1619プロジェクト」の立場からすれば、コロンブスは言うに及ばず、ワシントンもジェファーソンも、リンカーンさえも攻撃の対象になっているようだ。「1619プロジェクト」とは、アメリカという国のアイデンティティの全否定を行う試みである。
 
 バイデン派の勝利とは自虐史観・反米主義の勝利

 マスコミでもネット上の言論でも隠されているが、アメリカ大統領選をめぐる本質的な対立点は、愛国主義の「1776委員会」-トランプ派と反米主義の「1619プロジェクト」 -バイデン派との対立というものであった。
 そして、不正選挙によってバイデン派が勝利した。不正選挙がまかり通ったと言うことは、アメリカが民主国家ではなく、第二の中国、第二の全体主義国家になったことを意味する。また「1619プロジェクト」の思想を抱いたバイデン派が勝ったということは、反米主義・自虐史観が勝利したことを意味するのである。要するに、アメリカは、反米全体主義国家に向けて走り出したと言うことであろう。
 アメリカは、占領下日本に対して押し付けた自虐史観に苦しめられ、滅んでいくかもしれない。日本に対する原爆投下、「日本国憲法」の押し付け、東京裁判など、悪行の報いであろうか。
 
 反日反米思想を広げたオバマ民主党政権

自虐史観・反米思想は、遅くても2010年前後、2000年代に、アメリカの大学で、アメリカ全体の指導層・知識層の中で多数派になったようだ。アメリカの自虐史観・反米思想は、前に『西洋の自死』を紹介したときに記したように、反日思想とセットである。反米だけでは、余りにもアメリカ人自身が可哀そうすぎる。悪党のアメリカ人よりも上の悪党をこしらえなければ、アメリカ人も反米思想を受け入れにくい。アメリカ人よりも悪党として位置づけられるのが日本人である。つまり、民主党の考え方においては、思想的な反日反米体制が必要なのである。反米反日体制ではない。反日反米体制である。日本人の方が悪党として位置づけられるわけだから。

アメリカの、特に民主党界隈では、マスコミや大学界隈では、例えば朝鮮人慰安婦を強制連行し性奴隷にしたと言う物語は、どうしても必要であった。だから、オバマ政権は、この物語が嘘であることを知りながら、バイデン副大統領を使って、安倍首相に対して、2015年の安倍談話と日韓合意を通じて、謝罪的なものを強要したのである。

このように見てくれば、2015年の学び舎検定合格(学び舎は慰安婦問題を大きく取り上げていた)とは、アメリカ民主党政権からの反日思想押し付けの流れの中で生じたと言えよう。その延長上で起きたのが、2019年度検定における『新しい歴史教科書』一発不合格事件であった。

日本に反日思想を蔓延させるプロジェクトの中で、最大の障害は『新しい歴史教科書』の存在である。つまり、『新しい歴史教科書』一発不合格事件は、思想的な反日反米体制を固定化していく上で必須の事件だったのである。少し大げさな言い方をすれば、これが、この事件の世界史的意義だと言えよう。

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