育鵬社の声明批判、その1……ルビ問題について対中韓完全隷属路線を選択した育鵬社

平成24年6月13日、育鵬社は、教科書事業部の名前で、「当社歴史教科書への批判の誤りについて」なる声明を発表した。声明は、「つくる会」その他から批判が集中しているルビ問題、「南京事件」記述問題、育鵬社盗作問題の三点に関するものである。全てが出鱈目であり、嘘っぱちである。そして、はしなくも、盗作を自ら認めてしまっている。今回は、ルビ問題に関する育鵬社声明に対する批判を行っておこう。

扶桑社の方針を継続しているという育鵬社

教科書事業部の名前で出されているから、真部栄一氏か大越昌宏氏かが書いたのであろうが、恐らくは真部氏が作成したものであろう。いずれにせよ、教科書事業部長である真部栄一氏が責任を負うべき文章である。育鵬社は、この声明を「当社の歴史教科書記述について一部で批判があるようですが、事実に基づかない誤った言説であるため、以下ご説明いたします」と始めて、まずルビ問題について次のように述べている。

外国の地名・人名の振り仮名について
 当社の歴史教科書の中国、朝鮮の地名・人名については、教科書という教材の性格を考慮し、上ルビに日本語読み、下ルビに現地(語)読みを記しています。
 これは当社が、その教科書事業を引き継いだ扶桑社版教科書においても同様の措置を取っていたものであり、育鵬社版で初めて行ったとの指摘は、まったくの誤りです。


上記の事は嘘っぱちである。結論から先に言えば、育鵬社は、今回、扶桑社の方針を転換し、ルビ問題をめぐって対中韓隷属路線を更に進めたのである。

多数派はペクチェ・コグリョとは記していなかった……平成9年度版

平成9~13年度版以来の歴史教科書の歴史をふり返ってみよう。扶桑社の『新しい歴史教科書』は、平成12年度に初めて検定申請を行った。申請本を作成するに当たって、参考にしたのが平成9~13年度版の各社歴史教科書であった。当時の歴史教科書は、ルビ問題についてどういう態度をとっていたか。蒋介石、毛沢東、百済、高句麗の四件について中国語読み、韓国語読みのルビを振っていたか、調べてみた。表にまとめると以下のようになる。

平成9年度 蒋介石**毛沢東** * 百済 * 高句麗
日本書籍 チャンチェシー マオツォトン ペクチェ コグリョ
東京書籍 チャンチェシー マオツォトン ペクチェ コグリョ
大阪書籍 チャンチェシー マオツォトン ペクチェ コグリョ
教育出版 チャンチェシー マオツォトン ―――― ――――
清水書院 チャンチェシー マオツォトン ―――― ――――
帝国書院 チャンチェシー マオツォトン ―――― ――――
文教出版 チャンチェシー マオツォトン ―――― ――――


上のように、歴史教科書は二タイプに分かれていた。日本書籍、東京書籍、大阪書籍の三社は、四件すべてで中国語読み、韓国語読みのルビを振っていた。これに対して、教育出版、清水書院、帝国書院、日本文教出版の四社は、現代の人物である蒋介石と毛沢東については中国語読みのルビを振っているが、百済と高句麗については、伝統的な読み方を示している。それどころか、教育出版などは、百済については「くだら」とともに「ひゃくさい」というルビを振っていた。いわば、日本書籍等は対中韓完全隷属路線を取るのに対し、教育出版などは半隷属路線を取っていたのである。

さて、当時、合格さえも危ぶまれていた『新しい歴史教科書』は、二つのタイプのうちいずれかを採用するしかなかった。もちろん、教育出版など四社と同じ方針を採用することになった。この方針は、『新しい歴史教科書』の改訂版(平成18~23年度版)についても維持された。つまり、ルビ問題をめぐっては、「つくる会」は半隷属路線を取ったのである。

半分はペクチェ・コグリョとは記していなかった……平成18~23年度版

平成18~23年度版(自由社のみ平成22、23年度版)に焦点を当てればどうなるか。表にまとめておこう。

平成18年度 蒋介石**毛沢東**百済 *高句麗
日本
書籍新社 チャンチェシー マオツォトン ペクチェ コグリョ
東京書籍 チャンチェシー マオツォトン ペクチェ コグリョ
大阪書籍 チャンチェシー マオツォトン ペクチェ コグリョ
教育出版 チャンチェシー マオツォトン ペクチェ コグリョ
清水書院 チャンチェシー マオツォトン ―――― ――――
帝国書院 チャンチェシー マオツォトン ペクチェ コグリョ
文教出版 チャンチェシー マオツォトン ―――― ――――
扶桑社 チャンチェシー マオツォトン ―――― ――――
自由社 ―――― ―――― ―――― ――――
 

 その後、平成17年度採択戦の敗北後、「つくる会」は分裂した。「つくる会」は、平成22年度・23年度用として、自由社から『新編 新しい歴史教科書』を出した。その際、蒋介石と毛沢東についても中国語読みのルビを付さない方針をとった。この方針は、平成24~27年度教科書でも維持された。

   完全従属路線を選択した育鵬社

   これに対して、「つくる会」から出て行ったグループが支持した育鵬社は、どうしたか。日本書籍新社や東京書籍等と同じく、百済や高句麗についてまでも韓国語読みを導入したのである。つまり、ルビ問題に注目してみれば、「つくる会」分裂後、「つくる会」は半隷属路線から脱却して独立路線を目指してきたのに対し、育鵬社は自虐5社とともに完全従属路線を選択したのである。

  文科省よりも自虐思想に染まる育鵬社編集部
   
  では、なぜ、扶桑社の半隷属路線を捨て、完全隷属路線に転換したのであろうか。そうしなければ合格できないわけではない。なぜ、そうするのか。これは、育鵬社の編集部の思想のせいだろう。藤岡信勝氏は、平成18~23年度版教科書を作る過程について次のように述べている。

  実は、今の教科書をつくる過程でも、私は扶桑社の教科書担当者の真部栄一氏とものすごい厳しいやりとりをしてきたのです。文科省にすり寄るということをとにかくやるからです。真部氏は文科省の要求以上の、驚くべきほど日本を悪者に描く訂正案をつくってきた。  (『自由』2008年2月号)

   要するに、自虐的な真部栄一氏VS独立派的な藤岡氏という対立があったのである。この両者の思想的対立は、「つくる会」分裂の一要因でもあった。真部氏が牛耳る育鵬社版が、中国語読み・韓国語読みのルビを全体に広げたのも、「南京事件」を検定申請段階から認めてしまったのも、ある意味、当然のことだったのである。

   次回は、「南京事件」に関する育鵬社の声明について批判しておこう。

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